パチンコホールで朝から晩まで台に向かい続ける人々を見かけたことがあるでしょうか。個人的な経験では、パチンコ店で働いていた頃、毎日同じ顔ぶれの常連客の中に「専業」と呼ばれる特殊な立場の人々がいることを知りました。彼らは趣味や娯楽としてではなく、パチンコやパチスロで生活費を稼ぐことを仕事としている人たちです。
しかし、パチンコ専業という生き方には、一般的にはあまり知られていない厳しい現実があります。法的には無職扱いとなり、社会的な認知度も低いこの職業について、実際の収入や生活実態、そして将来性まで、包括的に解説していきます。
この記事で学べること
- パチンコ専業の月収は平均20〜40万円だが約8割が3年以内に廃業する
- 専業と兼業の決定的な違いは税務上の扱いと社会保障の有無にある
- 関西では「メシ食い」関東では「専業」と地域で呼び名が異なる
- 期待値稼働だけでは限界があり軍団化や情報収集が必須になっている
- 規制強化により2025年以降は専業として生き残ることが困難になる見込み
パチンコ専業の定義と基本的な仕組み
パチンコ専業とは、簡単に言えば「パチンコやパチスロの収益だけで生活している人」のことです。
正式な職業ではないため、法的には無職として扱われます。これは社会保険や年金などの社会保障を受けられない。ということを意味しており、多くの専業者が直面する大きな問題となっています。
専業という言葉自体は、1999年から2000年頃にかけて、インターネットのパチスロコミュニティで生まれました。それ以前は「パチプロ」や「スロプロ」という呼び方が一般的でしたが、「プロというには大げさ」「スポンサーもいないのにプロを名乗るのはおかしい」という批判から、より中立的な「専業」という表現が定着したのです。
実際のところ、専業として生活できる人は全体のごく一部です。
多くの人が挑戦しては挫折していく厳しい世界であり、安定した収入を得るためには相当な知識と経験、そして資金管理能力が必要になります。
専業と兼業の決定的な違い

パチンコ・パチスロで収入を得ている人には、大きく分けて「専業」と「兼業」の2つのタイプが存在します。
収入源と生活スタイルの違い
専業は文字通り、パチンコ・パチスロの収益のみで生活しています。一方、兼業は本業の仕事を持ちながら、副収入としてパチンコ・パチスロを打っている人たちです。
週6日・1日10時間以上
週2〜3日・1日3〜5時間
専業の場合、毎日のようにホールに通い、開店から閉店まで打ち続けることも珍しくありません。
兼業の場合は、仕事の休日や仕事終わりの時間を利用して打つため、稼働時間は限られます。
社会的立場と将来性の差
最も大きな違いは、社会的な立場にあります。
専業は法的に無職扱いとなるため、クレジットカードの審査や住宅ローンの申請が極めて困難。になります。また、国民健康保険や国民年金の支払いも全額自己負担となり、将来の保障もありません。
兼業の場合は本業があるため、社会保険や厚生年金に加入でき、安定した社会的地位を維持できます。パチンコ・パチスロの収入が不安定でも、本業の収入でカバーできるという安心感もあります。
地域によって異なる専業の呼び方と文化

興味深いことに、パチンコ専業の呼び方は地域によって大きく異なります。
関東地方では「専業」という呼び方が一般的ですが、関西地方では「メシ食い」という独特の表現が使われています。この「メシ食い」という言葉には、「パチンコで飯を食っている」という直接的な意味が込められており、より生活感のある表現となっています。
三重県でも「メシ食い」が使われることが多く、東海地方は関西文化の影響を受けていることがわかります。
また、最近では「パチニート」「スロニート」という新しい呼び方も登場しています。
これらは「パチンコ・スロット」と「ニート」を組み合わせた造語で、やや自虐的なニュアンスを含んでいます。
専業として生き残るための現実的な戦略

現代のパチンコ・パチスロ業界で専業として生き残ることは、以前と比べて格段に難しくなっています。
期待値稼働の限界と新たな手法
従来の専業は「期待値稼働」と呼ばれる手法を中心に収益を上げていました。これは、理論上プラスになる台だけを選んで打つという方法です。
しかし、規制強化により高設定台の数が激減し、期待値だけでは月20万円を稼ぐことも困難。になってきています。
そのため、現在の専業は以下のような複合的な戦略を取っています:
ハイエナと呼ばれる、他人が途中でやめた台の残り恩恵を狙う手法。
軍団を組んで情報共有や台の確保を行う組織的な活動。
朝一の恩恵狙いで効率的に立ち回る方法も重要な戦略の一つです。
資金管理と精神的な負担
専業として最も重要なのは、資金管理能力です。
一般的に、専業として活動するには最低でも100万円以上の軍資金が必要とされています。
これは、短期的な連敗に耐えられる資金力がなければ、すぐに行き詰まってしまうためです。
また、毎日同じホールで長時間過ごすことによる精神的な負担も無視できません。周囲からの視線、店員との関係、他の専業者との競争など、ストレス要因は数多く存在します。
専業の収入実態と税金問題
パチンコ専業の収入は、一般的に思われているほど安定していません。
月収20〜40万円という数字がよく言われますが、これはあくまで平均値であり、実際には月によって大きな変動があります。良い月は50万円以上稼げることもあれば、マイナス収支の月もあるのが現実です。
税金の申告と社会的信用
専業にとって避けて通れないのが税金の問題です。
パチンコ・パチスロの収入は雑所得として申告する必要がありますが、実際に確定申告をしている専業は全体の3割程度。と言われています。
申告しない理由として、収支の証明が困難であることや、申告することで「ギャンブラー」としての記録が残ることへの抵抗感があります。
しかし、無申告は脱税行為であり、後々大きな問題となる可能性があります。キャッシュレス化が進む現在、収支の追跡も容易になってきているため、適切な申告がより重要になっています。
業界の規制強化と専業の将来性
パチンコ・パチスロ業界は、年々厳しい規制にさらされています。
特に出玉規制の影響は大きく、以前のような大量出玉は期待できなくなりました。
これにより、専業の収入源は大幅に減少し、多くの専業者が廃業を余儀なくされています。
また、パチンコ店舗数の減少も深刻な問題です。全盛期には1万8000店以上あった店舗数は、現在では7000店程度まで減少しており、競争はますます激化しています。
よくある質問
Q1: パチンコ専業になるにはどのくらいの資金が必要ですか?
最低でも100万円、理想的には200万円以上の軍資金が必要です。これは、連敗時の生活費や次の勝負資金を確保するためです。また、最初の3ヶ月は収入が不安定になることを覚悟し、半年分の生活費を別に用意しておくことをお勧めします。
Q2: 専業と兼業、どちらから始めるべきですか?
必ず兼業から始めることを強く推奨します。本業を持ちながら休日や空き時間で実践し、最低1年以上安定して月10万円以上の収益を上げられるようになってから専業を検討すべきです。いきなり専業になることは、経済的にも精神的にも大きなリスクを伴います。
Q3: パチンコ専業の収入に税金はかかりますか?
はい、パチンコ・パチスロの収入は雑所得として確定申告が必要です。年間の収支がプラスの場合、その利益に対して所得税がかかります。無申告は脱税となり、後日税務調査で指摘された場合、重加算税などのペナルティが課される可能性があります。
Q4: 専業から一般の仕事に転職することは可能ですか?
可能ですが、空白期間の説明が最大の課題となります。「自営業をしていた」「家族の仕事を手伝っていた」などの説明をする人が多いですが、正直に話すことで理解を示す企業も増えています。転職活動中は、職業訓練校などでスキルを身につけることも有効です。
Q5: スマートパチンコの導入で専業は廃業するのですか?
完全に廃業することはないと思われますが、従来の手法では生き残れなくなる可能性が高いです。データ分析能力やIT知識が必要になり、より高度な戦略が求められるようになるでしょう。適応できない専業者は、徐々に淘汰されていくと予想されています。
パチンコ専業という生き方は、一見自由に見えるかもしれませんが、実際には多くの制約と困難を伴います。社会保障の欠如、不安定な収入、将来への不安など、解決すべき課題は山積みです。もし専業を目指すのであれば、これらのリスクを十分に理解し、長期的な人生設計を立てた上で判断することが重要です。何より、ギャンブルに依存しない健全な生活を送ることが、最も大切なことではないでしょうか。









